治療法の実際_一次診断、顎位の診断1

頭痛・顎関節症・腰痛・線維筋痛症などの筋筋膜性慢性疼痛への新しいアプローチ

治療法の実際_一次診断

顎位の診断1

 かみ合わせの異常には2種類あります。一つは歯をしっかりかみ合わせた時にどの歯も均一に当たるかどうか、側方運動で干渉がないかという意味のかみ合わせです。もう一つは、しっかりかんだ時の上下の顎の位置関係が適正かどうか、と言う意味のかみ合わせの問題です。どちらも、咬合時の違和感、どこかの歯が高い、または強く咬合するように感じる原因となります。
 前者の意味のかみ合わせの診査は一般的ですが、後者の意味のかみ合わせの診査は余り行われません。歯科医学的には「中心位と咬頭嵌合位の不一致」と呼ばれるこの種の咬合上の問題の診査が余り一般的ではない理由は、

「中心位」つまり「望ましい顎の位置」の決定法が未解決の問題だからです
 昔は「中心位」は下顎骨の関節頭が関節窩の後上方にある状態とされていましたが、これは便宜的に決められていただけであって、その位置に関節頭を誘導すれば症状が改善すると言う根拠があって決められていた訳ではありません。あくまで便宜的なものです。中心位の定義はその後何度も変更されていて、結局、現在はどの定義も正しいとする根拠が無いと考えられて、補綴学会では「中心位の定義は保留」としています。
 私の行っている顎位決定法は、咀嚼筋群と頚部の筋のテンダーポイントの反射を利用した方法です。
 腰痛や頭痛のもっとも頻度の高いものは筋筋膜痛症候群(MPS)タイプですが、MPSと線維筋痛症の特徴的な症状であるトリガーポイントは、MPSと線維筋痛症の発症メカニズムに密接に関係していることが確認されています。
 ですから、MPS型の腰痛や頭痛、線維筋痛症に対する顎位決定法として、現在のところ唯一科学的合理性がある手法であると考えています。
 この手法の高い成功率について、私は2005年の第49回日本リウマチ学会線維筋痛症セッションで報告しました。

顎位の診断2

 さて、顎のズレの方向はわかりましたので、今度はズレの量を調べます。顎関節症は線維筋痛症と同じ中枢性感作症候群であることは先に述べました。顎のズレ、すなわち口腔の固有感覚受容器が中枢神経に感作を引き起こしているので、中枢性感作症候群のメインの症状の変化を目安に顎位を決めます。写真3がその様子です。上下の歯牙が接触してしまうと顎が自由に動きませんので、細い木の棒か薄い木の小片を軽く咬んでいただいて顎を誘導します。
 方向と誘導量はトリガーポイントの触診で決めます。トリガーポイントが消失する顎位へ誘導できたら、その位置を記録します(写真1)

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写真1

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写真2

 写真2の状態で症状が明確に改善したら、例えば痛みが消えたり、手足に力が入るようになったり、歩けるようになったりするのですが、この咬合記録を基に顎を誘導する特殊なスプリント装置を作ります(写真5)。普通のスプリントとは違い、この装置には歯の形に凹凸があり、顎を特定の位置に誘導して固有感覚受容器からの異常な求心性信号を抑制します。

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写真5

 一日に30分から45分、この装置を使い顎の筋のリハビリをします。